ある人からの手紙~感謝状
これはある人から、
自分の「なくてななくせ」に関する感謝状をもらったと
想定して作った文章である。なので、主語はその人であり、私ではない。
私は「君」と呼ばれている。
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今年の五月に妻が亡くなった。
十二歳年下の彼女が私のもとに嫁いできてくれたのは、
私が帰国し、まるで浦島太郎にでもなった頃の事だった。
当時の私は日本の生活に馴染めず、戦前戦後の貨幣価値の違いにも戸惑っていた。
そんな私の代わりに、彼女は寄付金や財産の管理なども行なってくれたのだった。
彼女以外にも私を助けてくれた人は大勢いたが、
私は君にも感謝の言葉を送りたい。
なくてななくせの内の一つの口癖とはいえ、
君が何度も何度も、私の名前を連呼してくれたからこそ、
私は人々の記憶の片隅に残っていられたのだ。
でも、もうそろそろ、わからない人の方が多いに違いない。
ひょっとして、
君はもう周りの人々から次のように言われているのではないかい?
「一体誰のこと?その、『よっこいしょういち』って?」と。
PHOTOM@目指せ物書き